2019シーズンにJ1で披露したトリニータのサッカーはセンセーショナルな話題となった。「リスクを恐れず後方から繋ぐフットボールはJ1でも通用する」と自信を持てたが、藤本憲明の夏の移籍や負傷者の兼ね合い、上位チームと注意チームとの乖離に伴う目標地点の曖昧化が終盤戦の失速しになった。今季は課題克服のため、攻撃陣を中心にバージョンアップを図った。またJ2上がりチームの宿命と言える引き抜きは殆ど無く、主力選手が残ったことも大きい。そこに積み上げてJ1で上位を目指すべく各ポジション満遍なく補強した。
今シーズンの目標は勝点55で6位以内と公言しており、目標達成に向けた陣容は揃い指揮官の手腕に期待が高まる。
書き手:Y.K 編集:佐藤祐一
GK・DF
東京五輪メンバー選出も果たすべく、出場機会を求めた小島亨介がアルビレックス新潟に期限付き移籍した。代わってザスパクサツ群馬でJ2昇格に大きく貢献した吉田舜が飛び級個人昇格でJ1に台頭、2人は同い年で当時、大学年代トップクラスのGKだった。
ディフェンスラインには、盤石の3枚に加えてヴァンフォーレ甲府から小出悠太を獲得した。空中戦やビルドアップが特徴的で最終ラインから構築するコンセプトの戦術に於いて新しいピースが加わった。また若い世代の台頭も促し関西大学から羽田健人、米子北高校から高橋祐翔を獲得し将来性にも富んだスカッドだ。
MF
移籍が取り沙汰された小塚和季の残留で戦力ダウンを回避した。次の高みへ松本山雅FCから町田也真人、徳島ヴォルティスから野村直輝のW獲りに成功。2人は攻撃に厚みや変化をもたらすことができるプレーヤーであり、得点力向上へ新たなピースだ。
ボランチとウィングバックの顔触れは昨シーズンから概ね変わらず対戦相手によって組み合わせを変えてくるだろう。プロ1年目から欠かせないプレーヤーになった長谷川雄志や期限付き移籍から復帰する高畑奎汰の若手組が競争力を高める人材になり得る。V・ファーレン長崎から加入した香川勇気はウィングバックを想定できるがCBの左のストッパーを併用も考えられる。
FW
片野坂知宏監督自ら出向いて獲得した川崎フロンターレの知念慶の加入が大きい。直々のオファーということあって期待値は高い。出場機会が限られた…特に昨シーズン広範の鬱憤を晴らす活躍を見せられるかに注目だ。サプライズはザスパクサツ群馬からJ3得点王の高澤優也の獲得か。高澤はヘディングや一振りで試合を決めるシュートセンスに秀でている万能型ストライカーで、GK吉田舜同様、大卒2年目の選手となる。獲得したFWそれぞれ個性がハッキリしていて、リーグ後半戦得点力不足に陥ったが今年はその課題が払拭できそうなメンバーが集まった。