2020年10月1日14時、日本サッカー協会(以下、JFA)は、10月9日(vsカメルーン)、13日(vsコートジボワール)に行われるオランダ遠征の日本代表メンバー25名を発表した。初選出は2000年世代のDF菅原由勢(AZ/オランダ)のみで、ミルアカでも動画リリース済みの想定プランだったため、サプライズ選出はなかった。
 今回の招集は初めてのオールヨーロッパ組と2010年代の日本代表の進化を裏付けるかのような取り組みで、まずはその成長を手放しで喜びたい。その反面、新型コロナウイルスの蔓延に伴う異例なプランともなった。そこで今回は、ミルアカで10月2日午前6時半に公開した動画に加え、慎重派な森保一監督の「招集/非招集の線引きライン」について触れていきたい。
【動画|日本代表】オール欧州組代表メンバー25名発表&ロストフが漏らしたはずの橋本拳人がメンバー入りしてない理由
日本代表メンバー25名
GK
 川島永嗣 ストラスブール/フランス
 権田修一 ポルティモネンセ/ポルトガル
 シュミット・ダニエル シント=トロイデン/ベルギー
 DF
 長友佑都 マルセイユ/フランス
 吉田麻也 サンプドリア/イタリア
 酒井宏樹 マルセイユ/フランス
 室屋成 ハノーファー/ドイツ2部
 植田直通 サークル・ブルージュ/ベルギー
 安西幸輝 ポルティモネンセ/ポルトガル
 板倉滉 フローニンゲン/オランダ
 冨安健洋 ボローニャ/イタリア
 菅原由勢 AZ/オランダ
 MF
 原口元気 ハノーファー/ドイツ2部
 柴崎岳 レガネス/スペイン2部
 遠藤航 シュツットガルト/ドイツ
 伊東純也 ヘンク/ベルギー
 南野拓実 リバプール/イングランド
 鎌田大地 フランクフルト/ドイツ
 中山雄太 ズヴォレ/オランダ
 三好康児 アントワープ/ベルギー
 堂安律 アルミニア・ビーレフェルト/ドイツ
 久保建英 ビジャレアル/スペイン
 FW
 岡崎慎司 ウエスカ/スペイン
 大迫勇也 ブレーメン/ドイツ
 鈴木武蔵 ベールスホット/ベルギー
メンバー招集発表までの時系列
①対戦カード&オランダ開催の発表
②9月中旬「できるだけ多く(30名程度)の選手を呼びたい」
③9月下旬「想定する人数ほどは招集できないかもしれない。国内からは呼ばない」
④9日カメルーン戦21:00~/日テレ系列・13日コートジボワール戦23:45~/TBS系列を発表
⑤10月1日の招集
①④に関しては特段個別で言及する内容はないため、②③⑤の思考プロセスを考えてみよう。
「できるだけ多く(30名程度)の選手を呼びたい」
数日先の状況も多くの想定ができない中、今回はサッカー以外の部分の情報収集も必要だった。9月中旬段階では国内組への言及もなく、各方面の可能性を模索したのだろう。リストアップはかなりのラージグループだったと窺える。
「想定する人数ほどは招集できないかもしれない」
 ある程度の現実的招集路線が明確となり、非欧州組である日本国内やアジア、北中米、南米の可能性が遮断された。ロストフがMF橋本拳人の日本代表入りをTwitterで発表したのも、この下旬段階で招集レターが送られ、その後ロシア→オランダへの渡航ができないことから撤回された内容がSNS担当者とコミュニケートできていなかったためではないかと考えられる。
 MF橋本拳人やFW浅野拓磨(パルチザン・ベオグラード/セルビア)は現況でオランダ入りが不可能のため、今回の招集ができなかったとアナウンスされていたことから、彼らは招集対象者だったと考えられる。
メディアで言及されなかった若手枠
初招集はDF菅原由勢1人のため、各メディアはその存在をフィーチャーしたものの、本来の若手枠としては菅原に加えて、「コパ組」だったDF中山雄太、MF三好康児の2人もその枠に入る。東京世代では、DF板倉滉、DF冨安健洋、MF堂安律、MF久保建英がかねてからA代表に継続招集されていたものの、その他はU23をA代表化したケースでの招集だった。むしろ彼らの選出はビッグアップされておかしくない。
慎重的な招集となった理由
 「サッカー」と解釈するよりも、「チーム」と解釈して我々の日常に落とし込めば簡単な話、11ヶ月ぶりに顔を突き合わせ、1つの仕事を行い、戦術や仕事内容、互いの状況を確認し合うのに、初招集組を多く選出して連携を構築する時間はない。特に、ホテル内のコミュニケーションや、移動等のプロトコルにも多くの制限がつく今回は超異例の内容が伴う。森保監督でなくても、多くが似たような招集になるのではないか。
 同様に、WG中島翔哉(ポルト/ポルトガル)やWG遠藤渓太(ウニオン・ベルリン/ドイツ)、FW安部裕葵(バルセロナB/スペイン)、MF香川真司(レアル・サラゴサ/スペイン2部)など、負傷等の理由から試合出場や練習制限中の選手は当然ながら招集はできない。FW鈴木優磨(シント=トロイデン/ベルギー)とMF森岡亮太(シャルルロワ/ベルギー)の招集はスタッツを踏まえれば考慮されてもおかしくなかったが、やはり初招集選手ということもあっただろうか。
 逆に言えば、その中でも招集された菅原由勢にはツキを呼び込む素養が高いのかもしれない。アンダー年代からこの手のラックが高い選手でもあった。他国所属ではなく、オランダのクラブに身をおいているのも高要因の可能性が高い。
W杯本番まで50人程度のラージグループな可能性
2021年に東京五輪こそ開催予定となっているものの、全世界で国境を超える渡航はおろか、県境・州境をまたぐことすらも一定の制限をつけていることが多い。しばらく日本国内でサッカー日本代表(海外組も含めたという意味)の活動は難しく、ともすれば、アジア二次予選の残りや最終予選含めて、各クラブや国の意向に伴って「招集できない選手」が毎回一定数存在する可能性が生じる。カタールW杯まで2年あるが、いくらワクチンができても、各国のプロトコルが急に元の世の中のスタイルになるとは考えにくい。海外組も国内組も自己研鑽を継続することには変わらないが、「連携」という観点では、最終メンバー発表以降にならないと難しい部分もありそうだ。