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【ウルグアイ戦】森保ジャパンのスカウティングとポジショナルプレー~最も成長を求めるべきは監督自身~

【ウルグアイ戦】森保ジャパンのスカウティングとポジショナルプレー~最も成長を求めるべきは監督自身~

ハイライトテキスト

どれだけ豪華なメンツやねん/Yuichi Sato

 日本代表は日本時間21日、コパ・アメリカ2019グループステージ第2節ウルグアイ戦を2-2のドローの結果によって勝点1を獲得した。南米の威信をかけた本大会、ウルグアイはベストメンバーで臨んできた。FWエディソン・カバーニ(PSG/フランス)、FWルイス・スアレス(バルセロナ/スペイン)、CBディエゴ・ゴディン(アトレティコ・マドリード/スペイン)らヨーロッパのメガクラブでプレーする選手が数多くラインナップされたスカッドに東京五輪世代中心に構成された日本代表が挑んだ。

 まず前半24分左サイドのMF柴崎岳(ヘタフェ/スペイン)からサイドチェンジのロングボールを対角の右サイドで受けたMF三好康児(横浜F・マリノス/日本)が受ける。対面の1on1となったLSBディエゴ・ラクサールをステップフェイントで抜き去り、右足でゴールへ豪快に叩き込んだ。
 しかし、次のウルグアイの攻撃で日本は襲われる。前半29分、単純な対応に見えたFWカバーニのアクションに対してCB植田直通(サークル・ブルージュ/ベルギー)が足裏を見せながらの対応になったとVARに判定をくだされ、イエローカード並びにPKを取られてしまう。これをFWスアレスが冷静に決め、ウルグアイは早くも同点に追いついた。
 続いて後半14分、ウルグアイのアタックを迎撃すると、MF三好康児がセンターラインで時間を作る。RSB岩田智輝(大分トリニータ/日本)が右アウトレーンをフリーランすることで選択肢を作り、三好は一旦センターレーン前方へのパスを選択。これをMF安部裕葵(鹿島アントラーズ/日本)が倒れながら左サイドへ展開すると、LSB杉岡大暉(湘南ベルマーレ/日本)が持ち上がる。杉岡は前方のFW中島翔哉(アル・ドゥハイル/カタール)に預けて左アウトレーンをオーバーラップすると、リターンを受けてゴール前のFW岡崎慎司(レスター/イングランド)へクロスを送る。GKフェルナンド・ムスレラ(ガラタサライ/トルコ)がこれを弾くが、空いたスペースにつめていたのがMF三好康児だった。三好はこれで2得点。コパ・アメリカ史上日本人最多得点記録(2得点:呂比須ワグナー)に並んだ。
 ただしこれで終わらないのがウルグアイだ。後半21分、左CKから刹那的にブランクスポットとなってしまった箇所へ配球され、CBホセ・ヒメネス(アトレティコ・マドリード/スペイン)に合わされて失点を喫してしまう。その後日本は15分間に渡って猛攻を受けるも、防戦一方ながらなんとか凌ぎきり、引き分けで勝点1を獲得した。

スカウティングレベルに差がありすぎる

 せっかく、ミルアカの「YouTube」や「Twitter」、「コミュニティ」「ミルトト等」でもなく、サイトの記事までご一読いただいてますので、やや辛めのテイストで参りたいと思います。
 日本チームは、負傷等に伴ってスタメンを変更。明らかに悪手化したFW中島翔哉のアイソレーションや帰陣を要求させた守備型SB論、回収とトランジションの縦パスを両輪託した中山雄太への采配あたりを取り下げ、SBにも攻撃的なランニング、守備時にはサイドハーフに帰陣を要求し、CMFとDMFに関しては役割を各人ごとに明確化させた。しかしこれらは自分たちの改善点であって相手を見た上でのアンサーではない。あくまでチリ戦からの改善と自チームをより活かすための方策でしかない。
 対するウルグアイはハイプレスをかけてくる日本の性能を見抜き、立ち位置と守備範囲の深さを修正。さらには個々のプレイヤーに対する癖までチェックし、オーガナイズするところまで意思統一できていた。中島翔哉が左足を多用し、三好康児が右足偏重になったのはそのためだ。さらに、価値を手繰り寄せるため前半の約15分間は無理に攻めず、スカウティングの確認タイムにしていたとも思われる。


 また、動画で指摘した通り、序盤からウルグアイはセットプレイ時の研究もしてきたようだ。ニアは板倉vsカバーニ、ファーは杉岡vsスアレスとセットしていたが、中央だけはSBマルティン・カセレス(ユベントス/イタリア)、ヒメネス、ゴディンとその場で可変する戦術を取り、ギャップの確認作業を施していた。少しずつギャップを作られ、後半の失点シーンではニアサイドのカバーニとヒメネスの間には明らかにギャップが大きくなり、CB冨安健洋(シント=トロイデン/ベルギー)が一歩で届く距離ではなくなっていた。最初のセットプレイシーンから考えても1時間以上の時間があったにもかかわらず、日本は修正することが出来なかった。

思考力という絶対正義

 ミルアカにおいて「監督別」の動画を作らないのには理由がある。それは国内の多くの監督に、世界レベルで通ずる戦術の妙を見ることが出来ないからだ。選手配置のファーストセットや選手やクラブに対するモチベーターとしての能力は高いものの、いざ変化をつけねばならない場面に陥ると、選手個々に任せたり、気合注入や喝入れの傾向はまだまだある。もちろんそれらが悪いこととは思わない。場面によって叱咤激励は必要となる。しかしそれ前に施すべき戦術の変化を立てられていなかったり、相手の変化に気づくことが出来なかったりと、リアクションのタクティクスが欠けている。
 MF三好康児とMF柴崎岳が有したビジョンは明確だった。同様に、ウルグアイの選手全体やFWカバーニ、DFヒメネスあたりのビジョンも出来事を素因数分解して解を再構築することが出来ていた。

ウルグアイが講じたスカウティング

 チリ戦同様、序盤の15分間を「見」の時間に費やしてきたウルグアイは、スカウティング同様の実例が見受けられるかの時間に当て込んできた。前出の中島、三好のキッキングの癖や、SBとMFの連動状況、セットプレイの確認等のチェックを施した。対応に限界があると悟ったのは岡崎のプレスと柴崎のボールコントロール。そのため、後列は無理に前線まで飛び込むことをやめ、パスコースを遮断されているMFベンタンクール(ユベントス/イタリア)らへのセーフティーなパスではなく、FWまで縦断するようなロングパスを放ることとなる。
 この対応も一見すれば後手だが、日本のDFラインが空中戦対応の際どのような癖が生じるかを把握することが可能だ。結果として植田のPKも獲得したが、きれいに対応する日本と、ルールを見抜き、活用するウルグアイの解釈力の差も浮き彫りになった展開だった。

三好康児・板倉滉・久保建英の共通項~ポジショナルプレー~

 「川崎!」と答えたくなるが、今回はプレー面の話だ。チーム全体ではなく、個人レベルで相手に対する優位性を発見することができる選手たちである。この優位性の創出こそが「ポジショナルプレー」と呼ばれる。三好は得点のワンプレー前、左サイドのライン際で競った際にラクサールが足の受傷を確認している。利き足の左をフェイントに使い、右足で揺らした先制点は相手のスタイルではなく、変化を見つけたものだった。2点目もCB一方が必ず岡崎のダイアゴナルランについていく修正を見つけ、スペースを作り出した点に唯一侵入した選手でもある。
 対する板倉滉も、序盤こそふわふわとした入りだったものの、こぼれ球にチェックしてくるMFナイタン・ナンデス(ボカ/アルゼンチン)やMFルーカス・トレイラ(アーセナル/イングランド)、MFベンタンクールが空中戦後のリバウンドを回収するのを見るやいなや、自らの足元に収めたり、セーフティーゾーンへのクリアを選択したりと、相手にとって嫌な対応を取るようになった。この相手を見ることによって冷静さを獲得できる能力には一見の価値がある。強いて言えば、収めた後の縦パスを自チームの選手につけられるようになれば、本所属先のマンチェスター・シティに帰れる可能性も出てくる。

森保一代表指揮官の課題

 交代枠数すら異なる親善試合やあまりにもレベル差のある試合をさておけば、森保体制下での戦績は
1/28 イラン戦  ○3-0
2/1 カタール戦 ●1-3
6/17 チリ戦   ●0-4
6/20 ウルグアイ戦△2-2
4戦合計6得点9失点
 イラン戦こそ森保監督に一日の長があったものの、その後の3戦は勝ち星から遠ざかる。ネーションズリーグの問題はあっても、南米勢とカードをブッキング出来たことは良かった。もちろん、興行的な促進が必要なことは当然だ。ロシアWCベルギー戦、アジアカップ決勝カタール戦、チリ戦、ウルグアイ戦と、いずれも相手がスタイルを変化させた後に対応できず、失点を喫し続けている。4バックと3バックをスイッチさせるポイントや空中戦、スピードバトル、ポゼッションのスイッチタイミングなど、選手たちのモチベーションを鼓舞するばかりでは世界のトップレベルまでは対応できない。
 ウルグアイ戦では、中島翔哉に代えてWB菅大輝(北海道コンサドーレ札幌/日本)を投入すれば、板倉滉をダウンする5バックの形も、杉岡大暉を3バックにスライドさせる布陣もとることが出来た。安部を交代するにしても、DF立田悠悟(清水エスパルス/日本)を投入し、冨安健洋をハーフDFにスライドしてウルグアイのスペースを一枚潰すことも出来た。その後のコメントや取材対応の裏側の話を聞いても、明確な回答が出てこない。
 それでも、「メディアの方にはどんどん言っていただきたい」というのならば、我々が明確な解を徐々に発信し続けることが日本代表を強くさせられるポイントになるかもしれない。甘めというか愛情と熱でやってきたミルアカも、約1年がそろそろ経過する。熱の愛情はそのままに、辛さという新たな味の投入も考えてみてもいいのかもしれない。

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